市民調査ネットワークで疑問を解決!  アカボシゴマダラ春型の赤紋について

今年5月に、NACS-Jが事務局を担っているモニ1000里地調査で、埼玉県熊谷市の調査員の方から、アカボシゴマダラに関するお問合せをいただきました。

アカボシゴマダラとは、関東に分布拡大している外来のチョウです。
■国立環境研究所 侵入生物DB アカボシゴマダラ:
http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/60400.html

本来、アカボシゴマダラは大陸や朝鮮半島などに広く分布し、形態などの違いから

  • 大陸亜種(Hestina assimilis assimilis, ベトナム北部~中国南部~東部~朝鮮半島,および済州島など周辺島嶼)
  • 山東省亜種(H. a. inexpecta, 中国山東省)
  • 台湾亜種(H. a. formosana, 台湾)
  • 奄美亜種(H. a. shirakii, 奄美諸島(奄美大島,加計呂麻島,徳之島など))

の4つに分けられています。(括弧内は、学名と分布域)
名前に「アカボシ(赤星)」がつくように、後ろ翅の赤い紋が特徴的なチョウですが、大陸亜種では、幼虫越冬して春に成虫になったもの(春型)は白化型になります。関東地方で分布拡大しているものも春型は一般に白化し、大陸亜種とされています。
(*ただし、大陸亜種のなかでも朝鮮半島産は全く白化しません)

しかし、今回いただいたお問合せでは、春型個体なのに赤い紋をもつものが確認されたとのことでした。これは、もしかしたら新たに外来亜種が移入したのではという可能性も考えられました。

そこで今回、アカボシゴマダラについて、関東でチョウ類調査をしているいくつかの調査サイトから情報をいただくとともに、大阪府立大学の石井実先生、東京大学総合研究博物館の矢後勝也先生からアカボシゴマダラの春型についてお話をお聞きしました。

その結果、「関東に移入した大陸亜種のアカボシゴマダラ春型でも赤い紋が出ることがあり、今回見られたものも形態から大陸亜種である」ことがわかりました。また、他にもいくつか春型で赤い紋のあるものが確認されていることなどがわかってきました。
今回捕獲された個体は写真のとおりです。

上:2015年5月18日捕獲、下:2015年5月20日捕獲(いずれも埼玉県熊谷市にて)(上:2015年5月18日捕獲、下:2015年5月20日捕獲(いずれも埼玉県熊谷市にて))

さらに、矢後先生からは、大陸産(大陸亜種、山東省亜種を含む)の見分け方を教えていただきました。


大陸産のわかりやすい特徴

赤紋が小さな三日月型または中心に小さな黒点を伴う円斑型となる(奄美亜種ではより大きく発達して、さらに明瞭な輪状型となる。台湾亜種ではその中間型)


今回は、新しい移入種が分布を広げているわけではないことがわかりほっといたしました。
これも、多くの皆さまのご協力があったからです。誠にありがとうございました。

このように、それぞれの地域の方が異変に気付き、ネットワークの力で各地の情報を集めることができたことは、全国に仲間がいるモニ1000という市民調査の強みでもあります。特に、外来種の問題では、早期発見がとても重要になります。今後もこうした小さな異変に気付くことで、事態の拡大を防ぐことにつながるかもしれません。

皆さまもご注意いただければと思います。